JOURNAL
【農園ダイアリー】
猛暑と有機JAS認証、
エーデルワイスを
繋ぐ執念
2026.09.15

語り手:ラ・カスタ ナーセリー 担当スタッフ 坂﨑 勇人
長野県大町市で奇跡的に花開いたエーデルワイス。(前回:第1回「不可能と言われたエーデルワイス栽培、奇跡の始まり」はこちら)
しかし、本当の試練はここからでした。本来は2,000メートル級の高山に咲く花にとって、異常気象とも言える近年の地球温暖化はあまりにも過酷な環境だったのです。
猛暑を生き抜く株分けの歴史
初めて花が咲いたときの感動も束の間、本当の試練はそこから始まりました。15年という歳月の中で私たちが直面したのは、年々厳しさを増す地球温暖化の波です。とにかく近年はあまりに暑いです。15年前に栽培を始めた頃と比べても、明らかに気温が上がっていると肌で感じています。
気温が30度を超えるとエーデルワイスは夏バテを始めて、一気に具合が悪そうになるんです。特に梅雨時は一番辛いところ。大嫌いな雨で根腐れを起こしやすく、梅雨が明ければ連日、35度近くまで上昇していく。生き残る限界とも言える過酷な環境であることは間違いありません。
この厳しい気候の中、エーデルワイスの命を15年間繋ぎ止めてきたのは、地道な「株分け」のくり返しでした。暑さや寒さに負けた弱い株は淘汰され、過酷な環境を生き抜いた強い親株のDNAだけをクローンで繋ぐ。そうやって15年かけて、大町の暑さに耐え抜く力を少しずつ養ってきたんです。

全滅の恐怖と戦う有機栽培
私たちは 2024年9月、ナーセリーの一部区画において「有機JAS認証」を取得しました。有機JASとは、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然の力を活かして育てられた農産物であることを国が証明する厳格な制度です。商品の原料となるエーデルワイスは、この「有機JAS認証」を取得したほ場で栽培しています。
猛暑という気候の壁に加え、現在進行形で最も高いハードルとなっているのが、この有機JAS認証の維持なんです。そこには、想像を絶する厳格なルールが存在します。
一般的な栽培であれば、病虫害が出た際に農薬を使って対処するという選択肢があります。しかし、有機JAS認証のほ場ではそれが一切許されません。虫がついたら指で潰す。病気になったら、すべてを抜くか葉や茎を取り除く。それしかできないんです。道具にも薬剤にも頼らない、どこまでも地道で根気のいる手仕事の連続です。
特に感染力の高い病気が万が一発生した場合、1〜2日の見落としが畑全体の命取りになります。農薬という選択肢がないエーデルワイスのほ場にとって、それは常に全滅の恐怖と隣り合わせのプレッシャーです。
だから梅雨明けからは夏にかけて、本当に気が気じゃなくて。毎朝、畑に来てすぐ状態を確認するんですけど……、もし枯れていたらと考えると怖くて、あえて焦点をぼかして見てしまうくらいです(笑)。でも、私にとってそれだけ常に気になる存在なんですよね。

徹底的な記録と持続可能な農法
さらに、有機JAS認証は本来食べ物を前提とした制度。観賞目的が強い、花き類を想定した制度ではないため、作業のハードルはさらに上がります。農薬を使わない真の目的は、安全・安心という結果だけでなく、持続可能で環境にやさしい農法を実践すること。そのこだわりを証明するため、農園では7名のスタッフ全員が、緻密な管理を徹底しています。
日々、何をしたかすべて日誌に記録します。水を何分かけたか、使用する道具の清掃はおこなったか、認められた資材で間違いないか。そこまで厳しく管理・確認をしなければ継続の認可は下りません。本当に毎日の基本的な確認と記録を徹底するのが、有機JASの本筋なんです。

迫り来る猛暑、頼れる薬剤のないプレッシャー、そして妥協を許さない徹底的な記録管理。エーデルワイスと毎日真摯に向き合う私たちの手によって、一歩一歩、商品への道を歩んでいます。
<第3回の農園ダイアリーは、9月下旬に公開いたします>

